ミステリーアドベンチャーゲーム・Return of the Obra Dinn(オブラ・ディン号の帰還)の考察を、連載形式でやっています。
#3は第3章からいよいよ本領を発揮しはじめたキング・オブ・クソ、エドワード・ニコルズ二等航海士のおはなし。
チーム・ニコルズに加わったメンバーが個性的なので、メンバー構成について軽く考察しました。
お山の大将ニコルズのやらかし事案集もぜひどうぞ。

時は1802年。200トン以上の交易品を積んだ商船「オブラ・ディン号」が、ロンドンから東方に向けて出港した。その6か月後、同船は予定されていた喜望峰への到達を果たさず、消息不明扱いとなった。 そして今日、1807年10月14日早朝のこと。オブラ・ディン号は突然、ファルマス港に姿を現す。帆は損傷し、船員の姿も見えない。これを受け、東インド会社ロンドン本社所属の保険調査官が、ただちにファルマス港に派遣された。同船内を直接調べ、損害査定書を作成するために――。 「Return of the Obra Dinn」は、探索と論理的推理で展開する、一人称視点の謎解きミステリーアドベンチャーゲームである。
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【考察】ニコルズとゆかいな仲間たち
エドワード・ニコルズ二等航海士は、オブラ・ディン号を離反する際、人質2名に加えて、5人の乗員を連れている。
そのメンバー構成が気になったので、相関図書いてみた。

ロシア人2名が仲間になったワケ
サミュエル・ギャリガン、パトリック・オヘーガン、ホン・リはなんとなーくチーム・ニコルズのメンバーな理由もわかるけど、あとのロシア人2名が仲間になる理由がよくわからない。
せっかくだから考察してみよう。
金欲しい
これはロシア人に限らず、チーム・ニコルズがみんな思っていることのような。
フォルモサの人たちが持ち込んだ箱になんらかの価値を見いだしたからこそ、強奪しているわけだし。
ロシア人ふたりはギャンブラーでもあるようなので、もしかしたらお金に困っていたのかもしれない。
出身地のはなし
オブラ・ディン号はイングランド(イギリス)の商船だが、チーム・ニコルズのメンバーはニコルズ以外イングランド出身者はひとりもいない。
そこをちょっと深掘りしてみよう。
当時のイギリスは産業革命の影響で国際的な影響力は絶大なものだった。大英帝国ってヤツだね。植民地政策でアジアやアフリカに領土を拡大していったのもこの頃である。
その証拠に、船長をはじめとした航海士や役職をもつ人たちは、ほとんどがイングランドをはじめとするヨーロッパ出身である。

一方甲板員や檣楼員といった作業員たちのうち、ヨーロッパ出身者は半分ほど。残りはインドや中国といった、イギリスの被支配地域出身の人たちである。

オブラ・ディン号にはちょっと変わった国籍の人たちが何人かいる。調べたところ、彼らはみんなイギリスの植民地となった地域の出身でした。ハマドウ・ディオムのシエラレオネ、マバのニューギニアもイギリスの植民地だったそうな。
オミッド・グールのペルシャは現在のイランにあたるから、ちょっと違うかもしれない。
時代が時代だから、当然出身地によるあつれきや差別が当たり前のようにあったと思う。(フランス野郎、デンマーク野郎なんて呼び方もそういった意識からきてるかも)

話をチーム・ニコルズに戻すと、ニコルズは小心者のクソ野郎だから、悪事をはたらくメンバーを誘うとすれば、自分が強くでれるイングランド出身でない人を誘ったんではなかろうか、という考察。
この当時のイギリスとロシアの関係について詳しく分かる資料が見つからなかったんだけど、とある本で、この当時のロシアは他のヨーロッパ諸国からすると、クソ寒い野蛮な田舎というイメージだった、というのを読んだことがある。
てことはまぁ、世界の大英帝国様からしたらロシアなんて取るに足らないザコなんですよ、寒いし。
だからオブラ・ディン号のロシア人も、わりと肩身の狭い立場にあったんではないかと思います。
甲板員と檣楼員
ゲーム内用語集に、乗員の仕事内容や船の設備に関する説明がいくつかある。
一番したっぱなのは甲板員と檣楼員だが、彼らの中でも等級があるらしい。


そういえばチーム・ニコルズのメンバーは中国人のホン・リ以外、全員等級の低い甲板員である。中国人は檣楼員しかいないからしょうがねぇ。
関係ないけど中国人が檣楼員しかいないのって、体が小さくて高いところもへっちゃらだよってことかな、雑技団的な。
話をロシア人に戻して。オブラ・ディン号にロシア人は3名いる。そのうちふたりはチーム・ニコルズの甲板員、残る一人は檣楼員である。
同じロシア人どうし、仲良くギャンブルをしていても、実は彼らの間にちょっとした格差があったのかもしれない。それが結果としてチーム・ニコルズとして船を離反する一因になったかも、という考察でした。
人物考察にも書いたが、甲板員檣楼員うんぬんの前に、そもそも人柄の問題かもしれない。ロシア人檣楼員のレオニード・ボルコフは結構いいヤツで、終盤まで生き残り、怪物とも勇敢に戦ってくれる。
ギャンブルのシーンを見ても、迷惑そうなアラルクス・ニキシン、もはや無関心のアレクセイ・トポロフとは違い、具合の悪そうなインド人を心配している、ように見える。きっといいヤツ。

Return of the Obra Dinn(オブラ・ディン号の帰還)をプレイしよう!
この記事を読んで気になった方は、ぜひReturn of the Obra Dinn(オブラ・ディン号の帰還)をプレイしてみてください。
できればこの記事のことは忘れて、新鮮な気持ちでいちからプレイしてほしい(矛盾)。
確かに、ロシアは雑魚と思ってたのかもしれませんね。それにアイルランドもイングランドに併合されたばかり(1801年)ですし、イングランド人からしたら、なんとなく立場が下っぽいひとを手下にしたのかも。ロシアはイギリスとアフガニスタンを巡るグレートゲームでこの時期戦っています。
はじめまして、コメントありがとうございます。
世界史にはあまり詳しくなく、グレートゲームについても調べてまいりました!
ロシアはこのころ、イギリスと戦っていたのですね〜。
戦争している国同士の人間が、同じ船の中で働いていると考えると、やっぱりちょっとした力関係やいざこざはあったのかなぁと思っちゃいますね…。オブラ・ディン号のみなさんは基本仲良く働いているイメージありますが…。
初めまして。
ロシア人船員3人組は全員相続人の所在が不明になっていたので私は待遇の良くない甲板員でかつ「何かあったとき真っ先に切り捨てられそうなヤツ」「いなくなっても誰も不思議に思わなそうなヤツ」を考えてトポロフとニキシンが誘われたんだと考えていました。
実際ロシア組よりニコルズと付き合い長いはずのサミュエル・ギャリガンすら遺体捨てられてますし。
ボルコフは記事の通り檣楼員で待遇も悪くなくあれで意外と勤勉なので除外されたのでしょう。
はじめまして、コメントありがとうございます!
なるほど!相続人関連の情報についてはノーマークでした><
他の方のコメントで、当時ロシアとイギリスは戦争していたとの情報もいただいたので
ロシア人たちは母国にも居場所がなく、本当に己の身ひとつで船乗りしてたんでしょうね。
(わざわざ戦争している敵対国の商船で働くからには何か事情がありそう)
ニコルズもそのへんはしっかり調査してるみたいで、意外と用意周到ですね。