ミステリーアドベンチャーゲーム・Return of the Obra Dinn(オブラ・ディン号の帰還)の考察を、連載形式でやっています。
#6は重要人物のひとり、船長付き司厨手のフィリップ・ダールさんについて考察していきます。
時は1802年。200トン以上の交易品を積んだ商船「オブラ・ディン号」が、ロンドンから東方に向けて出港した。その6か月後、同船は予定されていた喜望峰への到達を果たさず、消息不明扱いとなった。 そして今日、1807年10月14日早朝のこと。オブラ・ディン号は突然、ファルマス港に姿を現す。帆は損傷し、船員の姿も見えない。これを受け、東インド会社ロンドン本社所属の保険調査官が、ただちにファルマス港に派遣された。同船内を直接調べ、損害査定書を作成するために――。 「Return of the Obra Dinn」は、探索と論理的推理で展開する、一人称視点の謎解きミステリーアドベンチャーゲームである。
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Contents
フィリップ・ダールについて
基本情報
まずはフィリップ・ダールさんの情報についてかるくおさらい。

ダールさんは船長付き司厨手。出身はスウェーデンで、感情がたかぶるとスウェーデン語が出る。
脳筋でおなじみ、ロバート・ウィッテレル船長とは20年来の付き合いみたい。その間ずっと司厨手やってたってことは、かなりベテランだね。おそらく船長が下級の航海士だったころから司厨手やってるんだろうなぁと推測。
スケッチでは船上の宴に登場。めっちゃ楽しそうに手たたいてる。絶対いい人。
船上での足取り

ダールさんの船上での足取りは以下。
第4章[出現]・その6

初登場は、まさかのニコルズが帰ってきたとき。
よく見ないと分かりづらいが、オブラ・ディン号の上の方にいることが確認できる。
第5章[呪われた獲物]・その2

お次は第5章その2に登場。
呪われた獲物の捕獲でわやわやする中、ひとりあらぬ方向へと走っていく様子。一体どこへ行こうというのか。
第5章[呪われた獲物]・その4

そして問題のシーン。ジョン・ネープルズの足を切り落として捕まる。
怪物の恐ろしさを警告するが、誰も耳を貸してくれず。
第8章[取引]・その1

最後は死亡シーン。シア・イトベンと同じく、箱に手を突っ込み、手が骨になって死亡。
イトベンが第4章でつっこんだ貝殻を、取り出しているものと思われる。
【考察】フィリップ・ダールは何を知っていたのか

フォルモサの王族以外で、誰より早く怪物の恐ろしさを警告していたフィリップ・ダール。
その警告どおり全員死んでしまったわけだから、やはりダールさんの警告は正しかったことになる。
ここでは、ダールさんが何を知っていたのかというより、なぜあの怪物の恐ろしさを知っていたのかについて考察していきます。
オブラ・ディン号では珍しい北欧出身
ダールさんはオブラ・ディン号の乗員では珍しい、スウェーデンの出身である。

20年もイングランド人船長の司厨手をつとめているのに、いまだにスウェーデン語が抜けていないあたり、おそらく相当愛国心がある人だと思うのよね。
だから祖国の文化や伝承に精通していて、あの人魚のような怪物についても知見があったのでは?と考えております。
そしてスウェーデン含めた北欧とよばれる地域には、イングランドや他ヨーロッパ地域にはない独自の文化と歴史が形成されているので、ダールさんしか知らない、という設定もなかなか辻褄があうのです。
北欧神話
歴史というか神話だけど、北欧に伝わる独自の神話があります。
日本でもいろんなアニメや漫画のモチーフになっているからかなりメジャーなはず。オーディン、トール(ソー)、フレイヤなんかは聞いたことある人も多いんじゃないかな。
ニワカのわたしがパッと調べたくらいでは、北欧神話にあの人魚っぽい怪物が登場する記述は見つけられなかったんだけど、きっと特定の地域ならではの伝承に、あの人魚っぽい怪物も登場するはず!そしてダールさんはその地方の出身である!
最後はかなりこじつけである。北欧神話に関する文献読んでちょっと勉強しよう。
北の海賊・ヴァイキング
ヴァイキングとは、8世紀〜10世紀にかけて西ヨーロッパを荒らしまわった北欧の海賊集団のこと。最近だと、アサシンクリード ヴァルハラというゲームに登場するっぽい。
北欧の海に生きた男たちだから、きっと海の怪物にまつわる伝説いろいろと知ってると思うのよね。#5で書いた、クラーケンも元は北方の海にあらわれたと言われているし。

なので北方出身のダールさんは、きっと人魚はクラーケンの前触れ、という、彼の故郷ではメジャーと思われる伝承を信じていたんじゃないかな。しかしイングランド人が大半を占めるオブラ・ディン号では誰も聞く耳持たなかったという…。
結果的に人魚を運んでいたジョン・ネープルズに襲いかかってまで阻止しようとしたけど、誰も味方になってくれないから自分が悪人扱い。悲しいなぁ。
デンマーク野郎はどうなのよ
怪物のことをダールさんしか知らなかった理由として、彼が北欧出身だからという結論にもっていきましたが、実はもうひとり、北欧出身の人いるんですよ。

てめぇはダメだ、デンマーク野郎でおなじみのラーズ・リンデです。
デンマークも一応、北欧に含まれるんだよね。なんなら、人魚姫の銅像はデンマークのコペンハーゲンにあるから、人魚についてはデンマーク人の方がなじみあるんじゃね?って気がする。
しかし、ラーズ・リンデが何かに気づいた様子は一切なし。これについてもちょっと考察してみました。
そもそも人魚を見ていない
オブラ・ディン号に人魚を引き揚げたとき、ラーズ・リンデは何をしていたかというと

ぐるぐる回して引き揚げ中。位置的にちょうど引き揚げられた人魚に背を向けている。
その後はフォルモサの王族たちが持ってた箱を運んでます。

このふたつのシーンを見る限り、ラーズ・リンデははっきりと人魚の姿を見ることができなかったと思われます。
見ていないのであれば、あの怪物がいかに危険かなんて分かるはずもないよね。
もし彼が人魚の姿を見ていたら、ダールさんと同じ行動にでたのだろうか。
運ぶ担当の矛盾
そう考えるとこのシーン、ちょっとおかしな点が出てきます。
人魚の引き揚げを担当していたのは、ラーズ・リンデ、アブラハム・アクバル、ウィリアム・ワシム、ネイサン・ピーターズの4人。

そのうちラーズ・リンデ以外の3人は、引き揚げた人魚をそのまま運んでいます。

普通、引き揚げ担当した4人で運ばない?4人必要なんだし。
じゃあ最終的に人魚を運ぶ担当になったジョン・ネープルズは、引き揚げ時どこにいたんでしょう?

いやいや、おかしくない???
なぜ引き揚げのときに箱の近くにいたジョン・ネープルズが、箱の側を離れて人魚を運ぶ担当になっているのか。
なぜ引き揚げを担当していたラーズ・リンデが、一緒に引き揚げしていた3人とは別で箱を運んでいるのか。
どう考えても、ラーズ・リンデが人魚の運搬を担当して、ジョン・ネープルズが箱を運ぶ方が自然。なんでこのふたり役割変わってんの。
この矛盾をつきつめると、やはりラーズ・リンデが人魚を運搬することに、なにかしら不都合があるんだと思います。
それが北欧出身だから、ダールさん同様人魚の正体に気づくはず、ということなのか。はたまたここでラーズ・リンデが死ぬと、デンマーク野郎!って殴られるルートがなくなるせいなのか。
前者だとわたしの考察が当たってたことになって嬉しいけど、どっちかというと後者の方がおもしろいからそっちであってほしいw
【検証】フィリップ・ダールはいつ死亡したのか
あまり考察とは関係ないけど、ダールさんについてもうひとつ気になることがありまして。
それは、彼がいつ死亡したのかということ。

ゲーム上、一番最後に見ることになるダールさんの残留思念。そして手記には第8章・その1の出来事として記録されるけど、実際に死亡したのはもっと前だと思うのよね。
少なくとも、クラーケンがやってきた第7章よりは確実に前。ダールさん死亡後に、船長が人魚のような怪物に「クラーケンを呼んだのは、お前たちだろう!」と食ってかかってるからね。
せっかくだからダールさんがいつ死亡したのか、検証してみようと思います。
フィリップ・ダールの死亡時刻

まずはダールさんの死亡時刻をチェック。時計は8:05をさしている。
このときはおそらく、まだクラーケンの襲撃前。なぜなら船体が揺れていないから。

ダールさんの死亡後、船長が怪物を殺害しているシーンでは船体がこれでもかっていうくらい揺れてるからね。
エドワード・スプラット(画家)の死亡時刻
じゃあクラーケン襲撃前ということで、脱糞中にクラーケンに絞め殺された画家の死亡時刻を見てみよう。

7:10。
あれ、ダールさんの死亡時刻と間があるな。同じくらいに死んだと思っていたのだけど、ひょっとして違うんだろうか。
ジョン・ネープルズ(甲板員)の死亡時刻
ちょっと違和感が出てきたので、ダールさんが閉じ込められた時刻、つまり、ダールさんが刺したジョン・ネープルズの死亡時刻をチェック。

5:21。うーん、ダールさん死亡時刻よりかなり前の設定になっている。一体どういうことなのか。
メメント・モーテムの機能
あのメメント・モーテムとかいう懐中時計、もしかすると死亡時刻をさすモノではないのかもしれない。
と考えて、各章の最初と最後に死亡した人物のさす時間をそれぞれ調べてみました。
はい、調べた結果の結論はこちらです。



メメント・モーテムがさしているのは死亡時刻ではなく、あくまで章ごとの時系列であると。
時間をさす時針が各章に対応しており、その章の中でおこった出来事を、分針で時系列順にあらわしているようです。
てっきり時計ひとまわりが1年単位になっていて、そこから死亡時刻を割り出せると思ったのにな〜。
なのでフィリップ・ダールさんの正確な死亡時刻も、はっきりとは分からないという結論になります。残念。でも間違いなく、クラーケン襲撃前だと思う。
Return of the Obra Dinn(オブラ・ディン号の帰還)をプレイしよう!
この記事を読んで気になった方は、ぜひReturn of the Obra Dinn(オブラ・ディン号の帰還)をプレイしてみてください。
できればこの記事のことは忘れて、新鮮な気持ちでいちからプレイしてほしい(矛盾)。
今まで読んだ考察類の中で、いちばん読み応えがあり論拠も多岐に渡っていて最高です!
可能であれば永遠に考察を続けてほしい…笑
コメントありがとうございます!とても嬉しいです😊
オブラ・ディン号の帰還考察シリーズは、いまのところ次回#7で完結を考えておりまして…><
永遠には続けられずすみません!笑
しかし考察以外の、ニコルズやらかし事案集みたいな、キャラ解説シリーズは細々とやっていこうかなと思っています。
お時間ありましたら、また遊びにきていただけると嬉しいです♪
初めまして
オブラ・ディン号の帰還を最近プレイしたものです。
私もこのゲームの真実のカギになるのは、フィリップ・ダールとマーティン・ペロットが何をどこで知ったかだと考えています。
私の考えを一方的にコメントさせていただくと、
船に乗った時点(手記の開始地点)では
・フィリップ・ダールは人魚と人魚が持つ魔物を呼ぶ貝殻については知っていたが、
台湾人の持つ特別製の箱については知らなかった
・マーティン・ペロットは何も知らなかった
と考えています。
しかし、この二人は死の直前には、人魚・貝殻・箱についてかなりの知識を持っているように見えます。
では、どこでこれらの知識を得たかですが、まず、この二人はフィリップが船尾倉庫に監禁されてから死ぬまでの期間のいつかに格子ごしに情報共有をしたのだと思います。
(証拠のない妄想でもうしわけありませんが)
ここで二人は人魚・貝殻・箱についての情報をお互いに出し合い、この時フィリップ・ダールは倉庫内の箱内部に貝殻が入っていることを知ったのだと思います。
そしてマーティン・ペロットは人魚に貝殻を返して海に逃がすことで、この不幸の連鎖が終わるとフィリップから教えられたんじゃないでしょうか。
ここで問題になるのが、マーティン・ペロットが箱の知識をどこで得たかですが、エバンズ医師から教えられたのだと思います。
エバンズ医師はエドワード・ニコルズが持ち帰ったリム様とイトベンの遺体に懐中時計を使うことで、プレイヤーと同じ死亡シーンを見たはずです。
これは知識欲のためにペットの猿を殺してしまうほど知りたがりなエバンズ医師ならば当然だと思います。
ここで人魚・貝殻・箱についての知識を得たエバンズ医師は信用のおける人物としてマーティン・ペロットにこのことを報告した。
(この時マーティン・ペロットにも懐中時計を使わせて信用させたとも考えられます)
報告を受けたマーティンは船尾倉庫のフィリップに相談がてら情報共有、悪夢の終わらせ方を教えてもらう。
そしてさらにマーティンは、フィリップとエバンズ医師の情報を総合して船長に報告。
しかしここで、エバンズ医師と懐中時計のことを伏せた為に、伝える情報が中途半端になったことで、船長の中で「貝殻を持った人魚を排除すれば問題解決」と勘違いさせる。
時を同じくして船尾倉庫でフィリップが箱から無理やり貝殻を回収して死亡。
フィリップが死んだ後に妻を殺されて激高した船長により、貝殻を持っていた人魚二人が殺される。
クラーケンが去って落ち着いた船長より、マーティンが事後処理を任される。
……といった妄想を膨らませております。
ちなみにですが、前記事で考察されているカニ戦士の正体に関しては、私は貝殻を持っていた人魚の夫たちじゃないかと考えています。
人魚二人が貝殻で夫に助けを呼んだのかと…
(考察理由は槍とトゲという攻撃手段の酷似です)
長々と書かせていただき申し訳ございません。
最後になりますが、オブラ・ディン号に関する記事、すべて楽しく読ませていただいております。
#7も楽しみにしております。
はじめまして!アツイ考察コメントありがとうございます!
わたしとは何点か異なる解釈もあり、とても参考になりました。
>まず、この二人はフィリップが船尾倉庫に監禁されてから死ぬまでの期間のいつかに格子ごしに情報共有をしたのだと思います。
これはなかなか斬新な説だなと思いました。
わたしとしては、フィリップ・ダールは閉じ込められてわりとすぐ死んだと思っていたので(彼の死亡シーンでガチャガチャと音が聞こえる=出してくれ〜!というアピール)、誰にも理解されず孤独に死んだという解釈でした。
しかしマーティン・ペロットは下級の乗組員も気にかける優しい人なので、ダールさんが乱心して倉庫に閉じ込められたと聞いたら、おそらく船長とダールさん両方の言い分を聞いてくれる気がします。ので、タナカさんの説も十分可能性あると思います。わたしが出してくれアピールだと思っていたガチャガチャ音も、マーティンと情報交換したあとに扉から離れた音かもしれませんね。
エバンズ医師が乗船中も懐中時計を使っていたことについては、わたしも同じように考えています。
我々がプレイヤーとしてオブラ・ディン号に乗り込む際は、無人なので特に気にしませんでしたが、人がいるところであの懐中時計を使うとどうなるんでしょうね?時が止まるのかな?
カニ戦士の正体についても、貴重なご意見ありがとうございます!
人魚の夫という発想はなかったですね…。たしかに攻撃手段は同じなので、まぁ同類なんでしょうねぇ。
海の怪物は奥が深い…。
#7の方はリアルが若干多忙なのと、なかなか筆がのらないのであまり進んでおりませんが、楽しみにしていただけるとありがたいです!