考察

【考察】アガサ・クリスティ-ABC殺人事件(Switch)〜Dの事件から見る緻密なストーリー構成【ネタバレあり】

ABC殺人事件_ストーリー考察

先日、アガサ・クリスティの名作『ABC殺人事件』を題材にした推理アドベンチャーゲームをクリアしました。

なかなか面白かったのと、ゲームオリジナルと思われる要素がいくつかあったので、クリア後に原作小説も読んでみました。

その上で気づいたことや思ったことがいろいろあったので、考察としてまとめることに。

全2回を予定しており、今回はおもにストーリーに関する考察となっております。

※これより『ABC殺人事件』の原作小説、ならびにゲームのネタバレを含みます。ご注意ください。

【ABC殺人事件】だいたいのあらすじ

ABC殺人事件_だいたいのあらすじ

まずは『ABC殺人事件』の内容と結末をサクッとおさらい。がんがんネタバレします。

【比較】原作とゲームの違い

次に原作とゲームの違うところを比べてみます。おおまかなあらすじや犯人は共通しているけど、第4の事件であるDの事件については大きく展開が分かれてますね。

【考察】Dの事件がストーリーに与えるインパクト

ABC殺人事件_ドンカスター

わたしはこの『ABC殺人事件』、ゲームをやるまで原作のことはなんとなーーく事件のあらすじを知っている程度でした。

しかしその程度の知識の中でもやたらと覚えていたのが、Dの事件の被害者のイニシャルがD.Dではないこと。

それまでの事件とはあきらかに異質で、規則をはずれていることになんかモヤモヤ。むしろそのせいで印象に残っていたのかな。

そんなわたしと同じ思いをかかえた人が『ABC殺人事件』のゲームスタッフにもいたのか、ゲーム版ではDの事件の被害者候補もしっかりとイニシャルD.Dの人物が選ばれております。

個人的に待ち望んでいたアツイ展開だったけど、あらためてそれを採用されると、事件解決の糸口が掴めず、『ABC殺人事件』というストーリーそのものが成り立たなくなってしまうのでは?と思うように。

それくらい、Dの事件はストーリーにおける重要な要素ってことですね。

もはや今さら語ることではないのかもしれませんが、わたしとしてはかなり思うところがあったので、いろいろと語っていきます。

『ABC殺人事件』におけるDの事件の役割

真犯人がDの事件を起こした理由

ABC殺人事件_カスト

真犯人であるフランクリン・クラークがなぜDの事件を起こしたかといえば、犯人役であるカストを捕まえてもらうためです。

Cの事件で兄を亡き者にするという目的を果たした彼にとって、このABC殺人事件を完遂するために必要な最後のパーツが、アレクサンダー・ボナパート・カストの逮捕。

ところがどっこい、Cの事件の調査があらかた済んだ後でも、警察やポアロはカストにたどりつくことができなかった。カストが思った以上に印象のない地味男だったせいもあるだろうけど。

これは真犯人フランクリンにとってはよくない傾向。犯人が逮捕されない限り、いまやイギリス中の注目を集めるこの事件の捜査は続くこと必至だし、そうなると事件がCで終わってしまっては怪しまれる上、自分が疑われる確率も上がってしまう…。

フランクリンとしてもこれ以上無用な殺人は避けたかったとは思いますが、カストに罪を被せるためにはしょうがない。逮捕さえできれば、警察もそれ以上追求しないだろうし万万歳ですからね。

Dの事件の目的はカストの逮捕

ABC殺人事件_カストの逮捕

フランクリンにとってA、B、Cの事件は、兄の殺害+そのための布石が目的でした。

しかしDの事件での彼の目的は、何度も言いますがカストを捕まえてもらうことです。

よってこれまでの規則に沿った殺人とは違い、カストのいる場所で人を殺し、その証拠をカストになすりつけることがなにより重要だった。

だから被害者については、その場にいる人であればマジで誰でもよかったのです。結果的にジョージ・アースフィールドという、イニシャルDまったく関係ない人が犠牲になってしまいましたが、フランクリンの読みどおり、警察は間違えたということで処理したし。

そしてDの事件がきっかけでカストは逮捕されたけど、それは同時にポアロが真犯人の存在を嗅ぎつけるきっかけにもなった。だからDの事件がそれまでの規則からはずれていることは、事件解決のためには必然のことだったのだと思います。

もしDの事件の被害者も、イニシャルがD.Dだったら

ABC殺人事件_被害者の共通点

じゃあもし、Dの事件の被害者もこれまでの規則に沿っていたらどうなんだろう?というのが、ゲームでのはなしですね。

しかもゲームでは、Dの事件が発生する前にカストは逮捕される筋書きになっているので、実質Cの事件までにカストにたどりついていなければならない。

ストッキングという共通項だけでカストにたどりつくことは無理、というのは原作で証明済みなので、ゲームではもうひとつ、咳止め薬という要素が追加されています。

真犯人フランクリン・クラークが一番殺害したかった兄、カーマイケル・クラーク卿が著名な元医者という設定を活かし、ほかの被害者たち、そしてカストも、彼の患者だったということになってます。フランクリンは兄のカルテから、被害者たちとカストを選定していたというわけです。

なかなかいい落としどころですね。うまいこと原作にマッチしていて、無理のない設定だと思います。

【原作orゲーム】どっちが現実的だと思う?

ABC殺人事件_ベクスヒル

最後に、原作とゲームの被害者選定について、どっちがより現実的なのかを深掘りしてみます。

Bが鬼門な原作編

原作の場合、Dの事件の被害者はテキトーだったので、実質やるべきことはAとBの被害者選び。

Aのアッシャー夫人については、自分の店に堂々と「A.Ascherの店」と看板を出していたので、そこまで選定に苦労しないかなと思います。

そうなると、Bが一番やっかい。最終的にどうやってベティに行きついたのかは忘れましたが(原作に書いてあったかなぁ?)、彼女はカフェでウェイトレスをしていたので、名札とかつけていればワンチャンありそうな感じはします。

でもイギリスの店員って名札するもの?そういうのは日本だけなイメージがあるけど…。もしご存知の方いらっしゃいましたら教えていただけるとありがたいです。

というわけで原作の場合は、AとBの被害者をめちゃくちゃ現地調査して探せば、まぁまぁなくはないかなという感じですね。

そんな偶然ある?なゲーム編

一方ゲーム版は、すべてクラーク卿のカルテが頼り。

クラーク卿がどれだけ患者をかかえていたかにもよるけど、AとB、さらにはDまでカルテから選べちゃうのは、ちょっと都合がよすぎなのでは?と思います。

おまけに犯人役のカストもカルテから選んでるからね。そうなるといよいよクラーク卿の名医っぷりに驚きを隠せないわけです。役者そろいすぎやろw

そしてゲーム版でも、Bについて気になることがひとつ。

Bのベティ・バーナード、ベティはあくまで愛称で、本名はエリザベス・バーナードとなっています。

で、病院で診察受けるときってフツーは本名書くよね?っていうのが疑問。病院側も愛称書かれても困るだろうし、保険証と名前一致しないだろうし(イギリスって保険証ある?)。

そうなるとカルテの記録はエリザベス・バーナードになり、イニシャルはE.Bになるので、被害者候補から外れちゃう可能性が高くなるわけです。

こう考えると、カルテで被害者を選ぶゲーム版の筋書きはちょっとつじつまが合わなくなるし、ちょっとキツイかなーと思います。

【結論】クリスティ先生のストーリー構成・神

ABC殺人事件_ポアロ

ここまで原作とゲームを比較して、あらためて思ったことは、クリスティ先生のストーリー構成が緻密すぎて神がかっているということです。

一貫性がなくてキモチワルイなと思ったDの事件も、どうやって選んだの?と言いたくなる被害者選定も、よくよく考えれば納得できる内容でした。さすがミステリの女王。

原作もゲームも、どっちも面白かったので、気になる方はぜひ!ここまで読んでたらほぼネタバレしちゃってるから楽しさ半減だろうけど。


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